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次世代リーダー(経営者候補)育成方法と必要なスキルとは?


次世代リーダー育成は、昨今のビジネス環境において無視できない重要な要素となっています。
一方で、これを適切に実現できていないという課題を抱えている企業も多いということが、様々な調査結果から見えてきます。

そこで、本記事では、次世代リーダーの発掘や育成、継続的な成長に焦点を当て、詳しく解説していきます。

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次世代リーダーとは、将来の経営者候補となる人材

次世代リーダーとは、一般的には企業やその組織において将来を担う経営幹部や将来の経営者候補となる人材と定義されます。

HR総研が2020年に行った調査によると、企業における「現在の採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオに関する課題」について、「次世代リーダー育成」と回答した企業が56%と最も多い結果となっています。

このことからも、多くの企業が次世代リーダーの育成に課題感を抱いていることがわかります。

引用:HR総研(2020)『人事の課題とキャリアに関する調査』

次世代リーダーの育成が求められる理由

従来の日本企業では、終身雇用をベースとした長期雇用、職層別の教育などを背景に、経営幹部候補を育てることを得意としてきました。
しかし、近年多くの企業でグローバル化やデジタル化が進み、これまでのように自然発生的に次世代のリーダーを担える人材を確保することが難しくなっています。

グローバル化の局面においては、必要となる言語や文化などを理解し、ビジネスをリードしていく力が求められます。また、デジタル化において、ビジネス環境の変化スピードが格段と速くなる中で、今までの価値観に囚われない発想力が求められています。

こうした、時代のニーズの変化が、求められる次世代リーダー人材像を変化させ、その適応が追い付いていない状況と言えます。

次世代リーダーに求められる資質とスキルとは

世界93カ国にわたりリーダーシップ開発に携わっているグローバル企業DDI社によると、次世代リーダーに求められる資質やスキルには、以下の3つが必要とされています。

Matthew J. Paese,Audrey B. Smith,William C. Byham(2017)「次世代リーダーシップ開発」

パフォーマンスとは、現職における仕事ぶりや業績を指します。
このパフォーマンスを継続的に出せていることは、次世代リーダーの対象として前提条件となります。

ポテンシャルとは、長期にわたって今後リーダー、将来の経営者候補として成長する可能性を指します。
そして、準備度とは、将来の特定の職務や仕事、階層への適合度を意味します。
この準備度は、経験や知識、コンピテンシー、個人特性などを複合的に考慮することで判断されます。

ここでは、その中でも特に評価が難しい「ポテンシャル」について、もう少し詳しく解説していきます。

【関連記事】コンピテンシーについては、こちらの記事をご確認ください。

次世代リーダーとしての「ポテンシャル」5つの要素

将来の次世代リーダーに成長していく可能性と未来の仕事ぶりを予想する要素として、以下の5つが挙げられます。

1、リーダーとしての素養

これは、課題が浮上した時に迅速にリーダーとして立ち回れたり、他者の良いところを引き出せる能力を指します。

また、他者からの信頼性が高く、私利私欲なしに組織や同僚のためになるような結果を達成することに尽力できる人材がリーダーとしての素養がある人材と言えます。

2、成長志向

成長志向を持ち合わせている人材は、新しい経験を重んじ、フィードバックと新たに学んだ知識を利用して成長しようとします。

また、こうした志向を持ち合わせている人材は、改善に向けた他者の助言に好意的な反応を示し、建設的なフィードバックを求める傾向があります。フィードバックへの前向きな姿勢、そこから学んだことから常に自分の取るアプローチを変えていける力は、次世代リーダーとして重要な要素となります。

【関連記事】コ―チャビリティ(フィードバックに対する受容性)についてはこちらの記事をご確認ください。

3、対応力

複雑な課題に直面した時に、特に優先度の高い事柄に重点を置き、素早く対応できる力を意味します。こうした力を持った人材は、概念的にものを考え、難しい職務であってもうまく切り抜けることができます。

また、周囲の状況変化に応じて柔軟にアプローチを変えることができるという点も、次世代リーダーに求められる素養と言えるでしょう。

4、組織文化への適合と成果の両立

組織ごとに文化が異なる中でも、常に組織独自の文化に合う方法で有益な結果を出せる人材は、次世代リーダーとしてのポテンシャルが高いと言えます。

また、職務を最後までやり通して目に見える結果を出すことに情熱を持っているか否かも重要なポイントとなります。

5、リーダーシップに対するモチベーション

どんなにポテンシャルを持った人材でも、リーダーへのモチベーションがない状態では職務を全うしていくことは難しくなります。

これには、モチベーション要因やストレス要因、個人的事情などを考慮し、形成が可能であるのかどうか判断していく必要があります。

次世代リーダーを育成する方法

次世代のリーダーを育成していく方法として最も重要なのが、リーダーシップ・パイプラインの構築です。そして、具体的な育成方法としては、実地による「経験」と「研修」の大きく2つが考えられます。

リーダーシップ・パイプラインの構築

リーダーシップ・パイプラインとは、次世代リーダーを絶え間なく育成していくための仕組みを指します。代表的なフレームワークとしては、アメリカのビジネスコンサルタントRam Charan、James Noel、Stephen Drotterの3氏によって提唱された「パイプライン・モデル」が挙げられます。

これは、次世代リーダーが通るべき6つの転換点を前提として、育成プランを構築する仕組みです。
この6つの転換点ごとに、「新しいスキル」「業務時間配分」「職務意識」を刷新していきます。

【関連記事】リーダーシップ・パイプラインについては、こちらの記事をご確認ください。

経験による次世代リーダー育成

経験による育成として参考になるのが、センター・フォー・クリエイティブ・リーダーシップ(Center for Creative Leadership.以下CCL)の研究結果です。
CCLは、リーダーシップ開発とリーダーシップ研究に関する国際的に知名度の高いアメリカの非営利団体です。

CCLによると、リーダーを育成するための経験として、「アセスメント」「チャレンジ」「サポート」の3つの要素が必要であるとされています。

「アセスメント」の要素とは、個人の現状を評価し、可視化されたデータを受け取る機会があることを指します。
この中には、現時点で適切に実行できていることと改善が求められることは何であるのかといったデータや、自分が今どういう状態にあるのかといったデータが含まれます。
こうしたデータを受け取る経験がリーダーとして成長を促すことにつながります。

この場合のデータとは、360度評価や人事評価などのものもあれば、顧客、上司、同僚からのフィードバックや指摘なども含まれます。
日常的にアセスメントの要素が組み込まれると、人は自身の成長と変化が必要であることを認識します。そして、現在の自己像と理想の自己像との間の差を埋めようとするモチベーションが高まります。

「チャレンジ」とは、個人が自分にとって馴染みのあるやり方や快適な状況を離れて、新しい課題に取り組むことを指します。
未経験の課題や高いプレッシャーを伴う課題に直面した際、人は安定した状態から抜け出さざるを得ずなくなります。そして、これまでの方法や思考パターンを再評価し、新しいスキルやアプローチを身につける必要性を感じます。
経験にこのような要素が含まれることにより、困難を乗り越えるために自己改善と成長に取り組むことが促されます。

最後の「サポート」とは、学習や成長の努力が価値のあるものであるというメッセージを伝えることです。
経験が困難なものであるほど、人は心の支えや励まし、承認がより必要になります。経験にサポートの要素が組み込まれると、人は自分自身に困難を克服する力があり、成長する価値のある人間であるという肯定的な意識を持つことができるようになります。

次世代リーダー研修による育成

次世代リーダー研修は、次世代リーダーに必要とされるリーダーシップスキルを強化することに焦点を当てて設計されます。
これにはコミュニケーション力、チームビルディング、コンフリクト解決、意思決定能力、戦略的思考などが含まれます。
こうした目的と対象者が絞られた研修は、短期間で効果的にスキルを習得でき、専門家からのベストプラクティスを学ぶ機会ともなります。

実地経験も重要ですが、組織や個人のニーズに応じて、実地経験と研修を組み合わせることも有効な手段です。

次世代リーダー育成の課題と解決策

次世代リーダーについて検討する際、リーダーシップのポテンシャルはあるものの、ビジネス上重要な役割に就くほどの経験がない人材が多いという課題に直面することがあります。

これは、ビジネスに関わらせたいものの、ニーズのあるビジネスに関わらせるには経験不足な人材が組織内に多いと言い換えられます。
この要因として、時間経過と共にそのうち必要な経験が身に付くと考え、待ってしまうということが考えられます。

確かに、これまでの変化が少ない経営環境では、そうした対応でも次世代リーダーが自然発生的に誕生するということもあり得ました。
しかし、前述したようにビジネス環境が急速に変化している現在では、こうした課題を抱えていること自体がリスクをはらんでいるとも言えます。

この課題を解決するためには、次世代リーダーが重要な職務につく準備を「成長課題」によって早めていくことが有効な手段となります。
成長課題とは仕事とイコールではなく、リーダー個人と組織に的を絞り設定される使命です。

日系企業では多くの場合、異動を新たな成長や人材開発の起点と考えています。
次世代リーダーの育成を考えた時、異動から成長課題へと焦点を移すことが重要です。
そうすることで、将来のリーダー育成に向けた人材開発の加速化が進み、上述したような課題を解決することにつながります。

まとめ

  • 次世代リーダーとは、企業やその組織において将来を担う経営幹部や将来の経営者候補となる人材。
  • 次世代リーダーに求められる資質とスキルは、パフォーマンス、ポテンシャル、準備度の3つ。
  • 次世代リーダーに必要なポテンシャルは以下の5つ。
    ・リーダーとしての素養
    ・成長志向
    ・対応力
    ・組織文化への適合と成果の両立
    ・リーダーシップに対するモチベーション
  • 次世代リーダーを育成する方法は実地経験と研修の2つ。
  • 成長課題を考えることによって次世代リーダー開発の加速化が進む。

フォスターリンク株式会社では、貴社のニーズに沿った人材開発や研修の設計とサポートも行っています。次世代リーダーを育成するための研修や手法などについてご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

参考文献

Matthew J. Paese,Audrey B. Smith,William C. Byham(2017)「次世代リーダーシップ開発」ProFuture株式会社
 Russ S. Moxley, Ellen Van Velsor, Cynthia D. McCauley (2011)「The Center for Creative Leadership:CCL」

HR総研(2020)『人事の課題とキャリアに関する調査』