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コンピテンシー評価とは | 項目・シート例と導入方法を解説

アメリカで生み出され、2000年頃から日本でも注目されてきたコンピテンシー評価。
導入を検討していても、なかなか全容がわからず踏み切れないというケースも多いのではないでしょうか。
今回は、そういった方に向けて、コンピテンシー評価の考え方や詳しい導入方法、メリットや導入における注意点まで詳細に解説していきます。

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コンピテンシー評価とは

コンピテンシー評価を考える前に、そもそも「コンピテンシー」とは何かということについて定義していきましょう。コンピテンシー研究の第一人者であるライルM.スペンサー氏、シグネM.スペンサー氏によると、コンピテンシーとは以下のように定義されています。


ある職務または状況に対し、基準に照らして効果的あるいは卓越した業績を生む原因として関わっている個人の根源的特性

引用:ライルM.スペンサー、シグネM.スペンサー「コンピテンシー・マネジメントの展開

すなわち、コンピテンシー評価とはこの個人の根源的特性をもとにした評価を指すと言えます。

もう少し理解を深めるために、この「基準に照らして効果的あるいは卓越した業績」という点と「個人の根源的特性」とはなにかという点についても詳しく解説していきます。

「基準に照らして効果的あるいは卓越した業績」とは

「卓越した業績」とは、統計的に平均的業績から標準偏差ひとつ分高い業績と定義されます。だいたいの職務でほぼトップ10%に相当する業績とされています。一方で「効果的な業績」とは、平均的なレベルの業績を指します。このレベルを下回った時には、その個人は当該職務をこなすだけの能力が備わっていないと判断されることになります。

コンピテンシー評価においては、この業績が異なるグループに分けて分析を行う手法が特徴的です。
コンピテンシー評価は、業績において全く差異を生まない特性や資格などはコンピテンシーとして認められず、人材の評価にも使うべきではないという発想の下に設計されています。

「個人の根源的特性」とは

「根源的な特性」とは、長時間にわたり一貫性を持って示される行動や思考の表出を指します。
その中でもコンピテンシー評価に関わる根源的特性は以下の5つに分類されています。

1.「動因」によって、人は目標達成に向けて自身の行動を駆り立てたり、行動を選択したり、逆にその他の行動を回避することができるとされています。

2.「特性」とは、例えば優れたスポーツ選手が持っている優れた視力や反応速度、成功を収めるマネージャーが持つ、怒りを爆発させないよう自制する力などを指します。

3.個人がほとんどの状況で効果的に機能できるという信念や自信は、この「自己イメージ」の一部に含まれるとコンピテンシー評価下では考えられています。
例えば、リーダーであることに価値を求める人は、その職務は「リーダーシップを発揮できるかどうかのテスト」だとあらかじめ伝えておくと懸命にリーダーを務めようとします。これは自己イメージの発露と言えます。

4.コンピテンシー評価においては、「知識」は非常に複雑であると考えられています。
その理由は、知識はテストにより図ることが容易である一方で、それが仕事上での業績に直結するわけではないことに起因しています。
知識は人材が何をできるのかを明らかにしますが、実際に何をするかを示しているわけではないため、コンピテンシー評価設計の際には注意が必要となります。

5.「スキル」は、身体的スキルと心理的スキルの2つに分けて考えられます。
身体的スキルとは、例えばプログラマーであれば、膨大なコードを論理的順序に並べ替えるスキルを指します。一方で、心理的スキルとは、分析的思考や概念化思考などを指します。

5つの根源的特性の考え方

上述した、コンピテンシー評価における5つの根源的特性は、人材開発のプランニングにも影響を及ぼします。

知識とスキルのコンピテンシーは目に見えやすく、比較的表層に位置する人間の特性です。
一方で、自己イメージ、特性、動因に関わるコンピテンシーは目に見えず、深層部の人格の中核に位置しています。

そのため、知識とスキルは比較的開発しやすく、コストに対する効果性も高いと言えます。
対して、中核に位置する特性と動因は開発することも評価することも難しいとされているため、コスト効果性を高めるためには、当初からこれらの特性や動因を備えた人材を採用したり配置することが良いと言えます。
また、自己イメージに関するコンピテンシーはこれらの中間に位置しており、時間を要しますが訓練に応じて態度や価値観を変えることが可能とされています

多くの会社や組織は、表層部の知識やスキルに基づき選考を行い、その後実務を通して根源的な動因や特性などのコンピテンシーを養ったり、優れたマネジメントにより開発できると仮定しています。ただ、コンピテンシーの考え方の下では、この逆の順序の方がコスト効果性が高いと考えています。
つまり、会社や組織は中核に近い動因や特性に関するコンピテンシーに基づいて選考を行い、その後実務を通して必要とするスキルや知識を習得するという考え方です。

職能資格制度との違い

ここで、職務遂行能力により昇格基準を定義づける「職能資格制度」とコンピテンシー評価との違いを能力評価の観点に立って詳しく説明します。

根本的な違いとしては、元となる「能力」と「評価方式」が異なります。


「能力」面での違いとしては、前述したように「保有能力(=獲得能力)」を起点としているのか、「発揮能力」を起点としているのかというポイントとなります。
コンピテンシー評価では発揮能力を起点としつつ、「行動特性」という言葉で説明しているため、職能資格制度とコンピテンシー評価では、評価対象が「能力」なのか「行動特性」なのかが異なると説明がなされます。これも間違いではありませんが、能力評価の観点に立つと、起点としている能力が違うということが言えます。

また、「評価方式」としては、「保有能力評価(=獲得能力評価)」であるか、「発揮能力評価」であるかという違いがあります。
保有能力評価(=獲得能力評価)とは、評価時点でどこまで保有能力のレベルが上がったのか評価する方式を指します。職能資格制度において、職能資格基準を満たしているかどうかを判断する際に使われるのがこの方式です。
一方で、評価期間中に、どの程度の能力が発揮されたのか評価する方式が発揮能力評価です。
特にコンピテンシー評価においては、成果のうち、運のような外的要因を排除し再現性のある成果を生み出すために発揮された能力を評価します。

コンピテンシー評価が注目された背景

コンピテンシー評価が日本で注目された背景には、日本における人材マネジメントの歴史的経緯が関係しています。
結論から言うと、年功主義から職能主義に変換したものの、年功主義的運用を止められなかった日本において、学術的で発揮能力を基礎としているコンピテンシー評価が受け入れられたという背景があります。
下記に詳しく解説していきます。

1960年代後半から1980年代頃、日本ではオイルショック後の経済成長の鈍化や高齢化の進展、技術革新などの外部環境の変化により、企業は年功的賃金体系を修正する必要に迫られていました。
経済成長の鈍化により、組織拡大を前提としたポストの増加が困難になり、高齢化の進展はポスト不足に拍車をかけます。また、技術革新により中高年層が維持してきた技術や技能が活かせなくなり、勤続年数に基づく昇進や年功主義の考え方を刷新せざるを得なくなりました。

こうした流れを受けて、「職能主義」という考え方が登場します。
「職能主義」は、「職務遂行能力」に基づいて人事評価、昇進、報酬などを決定する考え方を指します。これまでの日本で主流だったヒトを軸とした考え方を進化させ、職務遂行上必要な能力を満たしている人材の中からポストに就く人材を決定するもので、日本の人材マネジメント手法の中心となりました。

しかし、こうした能力を基準とした評価では、運用が曖昧になってしまうことから、結局は年功主義的人事運営の温床となっているのではという疑問が生じる中で、コンピテンシー評価が注目され始めました。

当時の日本企業がコンピテンシー評価に注目したポイントとしては、以下の2点が挙げられます。

1.科学的アプローチから導かれている

コンピテンシー評価は、1970年代にハーバード大学の心理学者であったマクレランド教授がアメリカ国務省の依頼を受けて、外交官の業績に差がつく要因は何かを研究したことから始まっています。
その後、リチャード・ボヤティズ氏が約2,000名の管理職の仕事の成果と能力の関係を整理し、1982年に『The Competent Manager:A model for Effective Performance』という著書を発表し、当時のアメリカで流行しました。
当時の日本が経験的アプローチで能力評価を捉えていた側面が強かっただけに、こうした事実を踏まえた研究的なアプローチから考えられた理論が魅力的であったという点が挙げられます。

2.発揮能力を起点としている

職能主義の考えの中では、個人の「保有能力」を元に評価を行っていました。
保有能力とは、顕在能力も潜在能力も含めて、本人が持っている能力を指します。職能主義下では、評価時点でどこまでその保有能力が高まったかを評価します。要するにこれまでの職務経験を通じて獲得した能力ということから、「獲得能力」とも言えます。
一度獲得した能力がすぐに消失するということは考えにくいため、職能主義の考え方では昇給や昇格を促し、結果的に年功主義的運用となってしまうというデメリットがありました。

一方で、コンピテンシー評価は「発揮能力」を起点としていると言えます。発揮能力とは、成果を生み出すために発揮された保有能力を指します。
定義にもあるように、どういった保有能力を持っていようが、重要なのは、その能力が成果を生み出すために発揮されているかどうかという点です。
こうした考え方が、当時の年功主義的な人材マネジメントからの脱却を模索していた企業から見て利点が多いと感じられたことが挙げられます。

コンピテンシー評価の目的・メリット

コンピテンシー評価を導入する目的とそこから得られるメリットとしてはどういったものがあるのでしょうか。ここではその目的とメリットについて具体的に解説していきます。

高いパフォーマンスを安定的に発揮させる
コンピテンシー評価は、端的に言えばハイパフォーマーの根源的特性をその他平均的なチームや従業員と比較することで導かれています。ハイパフォーマーのコンピテンシーに合わせた配置や育成、指導を行うことは、組織内の全メンバーが期待される水準以上の業績を継続的に発揮する土壌を築くことにつながります。
人材開発を効率化する
コンピテンシー評価の定義の中で説明したように、コンピテンシー評価では、個人の中核に近い動因や特性に関するコンピテンシーを特定します。そしてこれは後から開発することが難しいコンピテンシーと言われています。
そのため、動因や特性に関するコンピテンシーを特定し、それに基づいて採用や配置を行うことによってその後の人材開発が容易になりコスト効果性も高められるというメリットがあります。

また、これは同時に後継者育成計画(サクセッション・プランニング)の効率化にもつながります。
コンピテンシーをベースとした評価や人材開発により、その会社や組織にとってのハイパフォーマーとなる資質を特定できるため、その資質を持つ後継可能者を発見し、育成しやすくなるという効果もあると言えます。

会社の戦略との連動を容易にする

コンピテンシーは、ハイパフォーマーの根源的特性をもとに評価や配置、人材開発などの重要な人的局面に活かしていきます。
高い業績を上げられる人材は、会社の戦略との連動性が高いため、そのコンピテンシーは事業の方向性が変わったタイミングや事業の成長フェーズが変わったタイミングでも効果的に活用することができます。

コンピテンシー評価の導入手順

コンピテンシー評価を導入するには、すでに設計されているコンピテンシーディクショナリーを用いる方法などもありますが、ここでは最もオーソドックスな導入手順についてステップごとに詳しく解説していきます。

STEP1.対象となる職務の選定

実際のコンピテンシー評価の設計を始める前に、対象となる職務やポジションを特定しておくことが不可欠です。

評価制度に導入する場合、全ての職務を対象としたいと考えるかもしれませんが、企業戦略上重要な職務や成果に結びつき付加価値を生む職務にフォーカスすることで、今後のコンピテンシー評価が効果的なものとなり、コスト効果性も高くなります。

STEP2.判定基準の明確化

次に、分析対象となる職務における卓越した、あるいは効果的な業績を定義するための判定基準を明らかにします。これは、コンピテンシーを分析する上で最も重要なステップです。

理想的な尺度としては、例えば営業職であれば営業実績や利益率、研究職であれば特許や発表論文などハード面での成果に基づいた判定です。ただ、場合によっては職務に尺度を作り出すことも求められます。その場合は、チーム間で競争的な状況を作らせてその結果を尺度として用いたり、上司、同僚、部下、顧客による評価を活用するという方法もあります。

STEP3.尺度ごとのサンプル選定

前のステップで決定した判定基準と尺度に基づき、ハイパフォーマーの属するグループと平均的な人材の属するグループに分けます。ここでもし、ある職務における最低限の業績要件を満たすコンピテンシーを見つけ出すことを目的としているならば、第3のグループとしてあまり業績を残せていない人材を選んでグループを作ることもできます。
これは、例えば採用の際の最低基準ラインを作る場合に有効な手段となります。
理想的には、各職務ごとのサンプルには少なくとも20人の対象者を確保すべきです。内訳としては、ハイパフォーマーが12人、平均的人材が8人とされています。
もしここまでの人数を揃えられない場合は、最低でもハイパフォーマーが2人に対して平均的人材が1.5人の比率となるように調整します。

STEP4.データ収集

データ収集の方法は、どういったコンピテンシーディクショナリーを使うか、どういったデータ収集のメソッドを用いるかによって変わってきます。
ここでは、以下の最もオーソドックスな5つの手法について説明していきます。
(1)行動結果面接
これは、ハイパフォーマーと平均的人材の両方に面接を行う方法です。
内容としては、どちらもその職務で彼らが経験した最も重要だと思われる状況を選び、それについて説明してもらうものです。
面接者は、その状況の詳細や、誰がそれに関わっていたのか、どんな行動を取り、どんな結果が生じたのかについて尋ねていきます。
この方法は、ハイパフォーマーがいかに職務上の課題を解決するか正確に把握できる一方で、時間を要することと面接者の訓練が必要であることがデメリットとなります。
(2)専門家パネル

  これは行動結果面接に似ていますが、面接者がその研究対象の上司であったり、他のハイパフォーマー、外部の専門家になるという点が異なります。

こうした面接者が対象者とブレーンストーミングを行うことで、個人的な根源的特性を引き出し、価値の高いデータを迅速に効率的に収集できます。ただ、面接者が心理学的または技術的な用語を理解していない場合に、重大なコンピテンシー要件を逃がしてしまうというリスクもあります。
(3)調査
この方法では、コンピテンシー項目を、職務遂行における重要度やコンピテンシーが使われる頻度に従って評価していきます。
具体的には、特定のスキルをひとつずつ取り上げて、職務遂行に照らし合わせてそれがどう評価できるかを尋ねていきます。例えば、銀行の窓口係には正直さと数字に強いことが重要なコンピテンシーと認識されているが、このスキルを備えていないと職務を満足に遂行できないかどうか、といったような質問です。
この調査では、調査票に記入することで安価に大量のデータを収集することができるというメリットがあります。ただ、調査表にまとめられたコンピテンシーに限定されてしまうため、新たなコンピテンシーを見つけ出すことが難しいというデメリットも生じます。
(4)タスク分析
これは、当該従業員またはデータを収集する者が、一定の期間にその職務担当者が遂行する各タスクや機能、行動を事細かくリストアップする方法です。そして、それに対して質問表への記入、個人またはグループによる面接、直接的観察などを通じてデータを収集していきます。
この方法をとった場合、きわめて正確なジョブディスクリプション(職務記述書)が完成するため、その職務で要求される技術的タスクの詳細を通じて「知識」と「スキル」面のコンピテンシーを推量することができます。ただ、その職務を遂行している「人」ではなく、その職務自体の特徴にフォーカスされてしまうリスクもはらんでいます。
(5)直接的観察
これは、対象者が実際に重要な職務を遂行している様子を直接的に観察し、その行動をコンピテンシーとして収集していく方法です。
この方法は、専門家パネルや調査で提示されたコンピテンシーを見つけ出し、チェックしていくために有効です。ただ、重要な職務を遂行している場面はそう頻繁に生じないため、効率的ではないという点が挙げられます。この方法は、何を観察すべきなのか明確に定められており、かつそれが実行できるタイミングに限定して用いるべきです。

STEP5.コンピテンシーモデルの構築

このステップでは、前までのステップで収集した情報をもとに分析を行い、コンピテンシーを見つけコンピテンシー・モデルを構築していきます。
具体的には、2人以上の分析者がハイパフォーマーと平均的人材から得られたデータを並列に並べ、2つのデータ間の差異を見つけ出していきます。つまり、ハイパフォーマーが示し、平均的人材が示していない、あるいはその逆のコンピテンシーを探し出していきます。
その差異をもとに、発見されたコンピテンシーを行動コードブックとして作成していきます。この行動コードブックには、各コンピテンシーとそのスコア化のための尺度、さらに面接などから抜き出された実例を記録しておきます。この行動コードブックが、各職務に対してのコンピテンシー・モデルとなり、採用や人材開発などに活用されていきます。

STEP6.コンピテンシー・モデルの妥当性検証

次に、STEP5.で作成されたコンピテンシー・モデルの妥当性を検証していきます。
その方法は、大きく3つあります。
1つ目は、作成したコンピテンシー・モデルに記述されたコンピテンシーを測定するためのテストを開発し、ハイパフォーマーと平均的人材のグループの中から第2のグループを作り出し、彼らをそのテストによって評価することです。
もしテストの開発が難しい場合は、上司やその職務に対する知識を備えた他の検証者が、その第2のグループの人材を各コンピテンシーごとに評定するという方法でも代用が可能です。
2つ目は、上述した第2のグループから行動結果面接などを通してコンピテンシーを抽出し、スコア化した上で、最初のモデルが第2のグループのコンピテンシーを予見し得るかどうかを調べる方法です。
3つ目は、作成したコンピテンシー・モデルを使って人材を選び、訓練や育成を行い、彼らが将来実際に優れた業績を達成するかどうか検証する方法です。
これは最も強力なコンピテンシー・モデルの検証方法ですが、時間を要するため、実際にコンピテンシー評価を導入する際には上述した方法のいずれかを採用するケースが多いと言えます。

コンピテンシー評価導入・運用時の注意点

  • 行動基準を設定する単位によって大きく負荷や効果が変わる

コンピテンシー評価を導入するにあたって必ず議題に昇るのがどの単位で行動基準を設定するかどうかという点です。理論上は、ポストごとに職務内容は異なるため求められる根源的特性はポストによって変わるはずです。しかし、企業規模が大きくなればそれだけポストの数も増えるため、一つ一つのポストにすべて行動基準を設定することは現実的には不可能です。
そこで、何らかの形で職務を類型化し、その類型ごとに行動要件を設定していく必要が生じます。
ここで類型を細かくしすぎると設計と運用にかかる負荷が大きくなりすぎてしまう一方で、荒くしてしまうと正しく評価できない問題が出てきます。そのため、自社や組織の状況に応じて適した分類を見つけ出すことが導入には不可欠です。

・定期的に見直しが必要

コンピテンシーは個人の根源的特性を元にしているため、その土台となる、会社の事業や社会情勢や労働状況などが大きく変わった時には見直しが必要となります。
これは例えば、企業の成長フェーズに応じてパフォーマンスが出せる人に共通する行動特性が変わった時や、上述したようにM&A、グローバル化など大きく会社が変わるタイミングなどです。
コンピテンシー評価を形骸化しないためにも、こうしたタイミングでは更新が必要と言えるでしょう。

コンピテンシー評価(コンピテンシー・ディクショナリー)のサンプル

コンピテンシー評価の重要な要素となるコンピテンシー・ディクショナリーは、コンサルティング企業や自社独自のものなど様々なものが挙げられます。
ここでは、コンピテンシー研究の第一人者であるライルM.スペンサー氏、シグネM.スペンサー氏のコンピテンシーディクショナリーの一部をご紹介します。

コンピテンシー群 コンピテンシー 評価軸 行動例
達成
/アクション
達成重視 個人が実際に職務を達成する場面にフォーカスし行動を重視 マネジメントによって設定された基準を満たすべく仕事を進める。
秩序、品質、正確性
への関心
イニシアティブ
情報探求
支援
/人的サービス
対人関係理解 他の人たちのニーズにこたえるための努力を重視 クライアントの問題に対応する際に、長期的視点に立って協力する。
顧客サービス重視
インパクト
/対人影響力
インパクト・影響力 他社に影響を与える個人の考え方や行動を評価 ラポールを築くことに自ら努力することに意識的に取り組む。
組織の理解
関係の構築
マネジメント・
コンピテンシー
他者育成 他者をリードしチームワークと協調を促す行動を評価 チームのやる気と生産性を高めるために複雑な戦略を活用する。
指揮命令
チームワークと協調
チームリーダーシップ
認知コンピテンシー 分析的思考 個人がタスクや状況、知識などを理解しようと努力する姿勢を評価 スキルと知識を最新に保つことに努める。
概念化思考
技術的・専門的・
マネジメント専門能力
個人の効果性 セルフ・コントロール 個人の特性や成熟度を評価 仕事の変化にたやすく適応する。
自己確信
柔軟性
組織へのコミット
メント

まとめ

コンピテンシー評価は、会社や組織の戦略目標実現や効率的な人材開発のために効果的です。
正しく実施されたコンピテンシー評価は、組織の競争力を高め、持続可能な成長を支える鍵となりますが、導入には正しい知識を持って情報収集と分析を行うことが求められます。
評価制度の効果を高めるためにも、綿密に準備したうえで進めていくようにしましょう。

フォスターリンクでは、評価制度を含めた人事制度の構築から運用のサポートまで支援しています。コンピテンシー評価の導入を検討されている、人事評価制度の見直しを検討中の方は、ぜひご相談ください。

参考文献

・ライルM.スペンサー、シグネM.スペンサー(2001)「コンピテンシー・マネジメントの展開
・高原 暢恭(2022)「人事評価の教科書」