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コミュニティラーニングでリスキリングを促進する方法とは?

現代のビジネス環境は急速に変化し、個人が自らのスキルや知識を高め続ける必要性が高まっています。その中で注目を集めているのが「コミュニティラーニング」という学習スタイルです。

コミュニティラーニングは、共通の関心や目標を持つ人々が集まり、互いに学び合い、協力しながら知識を深めていく学習の形態を指します。この学びの形式は、組織内外の人材育成にとって多くのメリットをもたらします。

本記事では、コミュニティラーニングの意義や、企業や個人にとっての利点、そしてその実践方法について探ります。

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コミュニティラーニングとは

コミュニティラーニングとは、共通の関心や目標を持つ人々が集まり、互いに学び合い、協力しながら知識を深めていく学習の形態を指します。
ビジネスにおいては、1990年代初頭にエティエンヌ・ウェンガー(Etienne Wenger)によって提唱された実践共同体とほぼ同じ認識と考えています。

コミュニティラーニングは、あくまでも自律的な学びを前提としています。
参加や退出を命じられるものではなく、自分で参加や継続の可否を決定することができます。

コミュニティラーニングが注目されている背景

日本でコミュニティラーニングが注目されている背景には、リスキリング(学び直し)の重要性が高まっていることが挙げられます。
急速に進むデジタル化やDXへの対応が求められる中、新しいスキルの習得が必要とされています。
しかし、従業員が個々で学ぶだけでは行動を起こすことやモチベーションの維持に限界があります。
そこで、共に学び合い、経験や知識を共有するコミュニティラーニングが効果的として注目されています。

リスキリングの促進とコミュニティラーニングの組み合わせが、これからの人材育成の鍵となっていくことでしょう。

コミュニティラーニングのメリット

コミュニティラーニングは個人と組織双方に対して、それぞれメリットがあると言えます。

個人におけるコミュニティラーニングのメリット

コミュニティラーニングは、企業に限らず個人にも多くの利点をもたらします。特に、自己成長やキャリアアップを目指すビジネスパーソンにとっては、次のようなメリットがあります。

1) 自律的な学習能力の向上

コミュニティラーニングでは、個人が自ら学びたいテーマを選び、積極的に関わり合いながら学ぶことが求められます。

自分の関心に基づいて学習を進めることで、自律的に学び続ける習慣が身につき、キャリア形成に役立つスキルの獲得にもつながります。

実際に、パーソル総合研究所の「学び合う組織に関する定量調査(2023年)」からも、コミュニティラーニングは学びの自己認識向上に寄与することが発表されています。

パーソル総合研究所「学び合う組織に関する定量調査(2023年)

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2) 多様なネットワーキングの機会

異なる業界や職種の人々と学び合うことで、個人は広範なネットワーキングの機会を得られます。

ビジネスにおけるネットワークは、新たな知見やチャンスをもたらし、キャリアにおいても強力な資産となります。コミュニティラーニングの場を通じて築かれたネットワークは、長期的な学びのパートナーとしても役立つでしょう。

3) 問題解決力の強化

コミュニティラーニングの場では、異なる経験を持つ参加者が一つの課題に対して様々な視点から取り組むため、問題解決力が強化されます。

他者の解決策やアイデアを通じて、自分にはなかった新たなアプローチを学ぶことができ、ビジネスの現場で応用する力が磨かれます。

組織におけるコミュニティラーニングのメリット

企業や組織において、コミュニティラーニングは重要な人材開発の方法として、多くのメリットをもたらします。ここでは、その代表的なメリットをいくつかご紹介します。

1) 知識の共有と組織全体のスキル向上

コミュニティラーニングは、参加者が各自の専門知識や経験を共有することで、組織全体の知識レベルが底上げされます。

従業員が業務を通じて得た知見や、過去の失敗から学んだ教訓を共有することで、同じ過ちの繰り返しが防げるだけでなく、組織全体のスキルと対応力が高まります。

2) イノベーションの促進

多様な視点が集まるコミュニティラーニングの場では、参加者が自分の意見を積極的に共有し合います。このような多様性があると、異なる視点や知識が融合し、新しいアイデアやイノベーションが生まれやすくなります。

イノベーションは、同じ分野の経験を持つ者同士ではなく、異なるバックグラウンドの人々が交わることで生まれるケースが多いため、コミュニティラーニングがイノベーションを後押しします。

3) 職場のエンゲージメント向上

従業員同士が自発的に学び合う場を提供することで、相互の信頼関係が強化され、職場のエンゲージメントが向上します。

共に学び、成長することは、単にスキル向上だけでなく、従業員同士の関係を深め、職場での協力体制を強固にします。これにより、従業員が組織の一員としての意識を持ちやすくなり、離職率の低下にも寄与します。

コミュニティラーニングの実践方法と成功のポイント

コミュニティラーニングを効果的に実践し、成功へ導くためにはどういったポイントがあるのでしょうか。以下に重要な要素やポイントについて解説します。

コミュニティラーニングに必要な3つの要素

実践共同体の理論を提唱したエティエンヌ・ウェンガーは、コミュニティラーニングには以下の3つの要素が必要だと述べています。

1、領域(domain)
2、コミュニティ(community)
3、実践(practice)

以下にそれぞれを詳しく説明していきます。

1、領域(domain)

実践共同体が共有する共通の関心や専門性のテーマを指します。
領域とは単なる興味ではなく、知識やスキルを深める目的を共有する対象です。
例えば、ソフトウェア開発でのアジャイル開発手法を学ぶことや、医療分野での緩和ケア力の向上などを指します。

2、コミュニティ(community)

領域に関心を持つ人々が集まり、相互作用や協力を通じて関係を築く場を指します。
信頼関係や心理的安全性が構築されることが重要です。

3、実践(practice)

メンバーが共有するノウハウや方法論、ツール、経験など、具体的な行動や活動を指します。
これは個人のスキルや知識だけでなく、コミュニティ内で蓄積された知識や経験の共有財産となります。

実践を通じて、学びが理論から具体的な行動へと転換され、メンバー全体のスキルや成果が向上していくことに繋がります。

コミュニティラーニングを成功させるためのポイント

上記の3つの要素を踏まえて、具体的にコミュニティラーニングを成功させるためのポイントを解説します。

1) 学びのテーマや目標の明確化

コミュニティラーニングを開始するにあたり、参加者全員が共通の学びのテーマや目標を持つことが大切です。

例えば、「リーダーシップスキルの向上」や「デジタル変革の理解」など、明確なテーマがあれば、学びの方向性が定まり、各自の貢献がしやすくなります。

2) 対話の機会とファシリテーション

コミュニティラーニングの場では、参加者が積極的に対話できるよう、ファシリテーターが対話を促進することが重要です。

全員が意見を表現しやすい雰囲気づくりを行い、多様な意見が交わされることで、学びが深まります。ファシリテーターの役割を持つ人は、対話のバランスを取りつつ、学びを引き出すことが求められます。

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3) 継続的な学びの場の提供

一度の学びで終わらせるのではなく、定期的に学びの場を設け、継続的なコミュニティラーニングの機会を提供することもポイントです。

学びが定着し、成果として反映されるには時間がかかるため、長期的に学ぶ姿勢を育むことが重要です。

まとめ

コミュニティラーニングは、学び合うことで個人と組織が共に成長し、ビジネスにおける変化に柔軟に対応するための重要な手段です。
現在多くの企業に求められている、リスキリングを効果的に進める手段として、今後個人と組織の成長を支える鍵となるでしょう。

参考文献

パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」
松本雄一(2024
『学びのコミュニティづくり ―仲間との自律的な学習を促進する「実践共同体」のすすめ―』