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スポーツ選手の事例でコーチャビリティを解説-ライフセービング 池端拓海選手

「コーチャビリティ」とは、個人の成長とパフォーマンス向上を促進するために、建設的なフィードバックを求め、受け入れ、実行する意欲と能力とされています。

元々はスポーツの分野において、高いパフォーマンスを生み出すための基本的な資質のひとつとして紹介された概念です。 

実際に「コーチャビリティ」を理解し取り入れることで、どのように個人の成長につながるのでしょうか。今回、弊社はライフセービングの世界選手権で優勝経験のある池端拓海選手にインタビューを行いました。

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水泳からライフセービングへ:池端選手の新しい挑戦

――池端選手がライフセービングをはじめたきっかけを教えてください。  

小さい頃から高校生まで水泳をやっていて、大学進学のタイミングで、このまま水泳を続けるか他の新しいことにチャレンジするか悩んでいました。当時、進学する大学でライフセービングクラブの主将をやっていた昔からの仲の良い先輩にライフセービングの話を聞き、水泳を活かしたものであったし、面白そうだと思ったことがきっかけでした。  

――ライフセービングとはどのような競技なのでしょうか。  

ライフセービングとは、水辺での救助力を向上させるためにつくられたスポーツで、基本的にどの種目も人命救助に直結するような内容になっています。海で行うオーシャン競技とプールにおける救助を想定したプール競技があり、約30種類の種目数があります。私が主に取り組んでいるのは、泳ぎの競技であるサーフレース、パドルボードに乗って競うボードレース、サーフスキーというカヤックのような舟を漕ぐサーフスキーレースの3つで、これらをトライアスロンのように連続して各1周ずつ行います。個人の競技も団体の競技もどちらもあります。  

コーチやチームメンバーとの関わりが重要となるライフセービング競技

――普段の練習は個人でされているのでしょうか、それともチームでされているのでしょうか。  

必ず誰かと練習をしています。一人だと気づきが少なく、自分の限界値を超えられないと感じるからです。ライフセービングの選手とも練習しますが、例えば、競技によっては、水泳の練習やトライアスロンの練習が役立つこともあるため、水泳の選手やトライアスロンの選手とトレーニングすることもあります。  

――競技でのコーチやチームメンバーとのかかわり方を教えてください。  

競技がマイナーのため、ローカルなクラブだとコーチがついていないこともあります。大学でライフセービングをはじめたばかりの頃は、ライフセービングの知り合いも少なく、自分に実績もないため、主に大学の先輩と一緒に練習をしていました。試合に出るようになってからは、必ず試合を振り返っていました。大会に出始めて人脈が広がった際には、大会で繋がった方と一緒に練習をしてもらうことや、やり方を聞きに行くなどを積極的にしていました。受け身では成長できないと考えています。  

日本代表となり掴んだフィードバックの活用法 

――いつから積極的にフィードバックを求める姿勢になりましたか。  

19歳で日本代表になってから芽生えました。海外選手に勝てなかった時に、どうやったら勝てるか、もうワンステップ上に行けるかということを考える中で、変わっていきました。 

――フィードバックをどう受けとめていましたか。  

しっくりこないポイントや疑問点は相手に質問をして自分に落とし込むようにしています。一旦やってみて、そのやり方が違う場合はやめることもあります。自分に何が足りなかったかしっかり考え、フィードバックされたことを自分に落とし込んでいかないと次に勝てないと考えています。  

――フィードバックを受けとめて結果に直結したことはありますか。  

直接的なフィードバックがきっかけでこの時勝てたということは難しいですが、フィードバックの積み重ねで自分が変わっていくという実感はあります。色々試して、色々な人に話を聞きに行くということは自分が成長する上で大切であり、フィードバックは絶対に活きています。  

池端選手が語る「コーチャビリティ」とは

――今回インタビューを受けて頂くにあたってコーチャビリティという言葉の定義を聞いてみて、自身を振り返って何か思うことはありますか。 

コーチャビリティという単語は初めて知りましたが、調べてみた時にまさに自分の事だと思いました。 

コーチやフィードバックをしてくれる人がいつもいたわけではないので、自分で聞きに行ったり人の輪を広げたりしながら環境を作ってここまで来れたところは、コーチャビリティに拠るところが大きいと思います。 

――今後の展望について教えてください。  

ライフセービングは、直接的に社会的な貢献をしている競技です。必ず誰かのためになっているこの競技を色んな人に知ってもらいたいです。人の感動を動かすきっかけ作りを作っていきたいと考えています。  

プロフィール > 
池端 拓海(いけはた たくみ)  

幼少期から取り組んできた競泳経験を活かし、2015年大学入学とともにライフセービング活動と出会う。国内大会では学生選手権3連覇、2017年全日本選手権で優勝を果たし、日本代表に初選出。国際大会でも数々の大会で入賞を果たし、2018年には日本代表として出場した世界選手権で優勝し、世界チャンピオンに輝いた。夏の海水浴シーズンは、本須賀海水浴場を中心に千葉県九十九里浜のビーチに立ち、パトロール活動を行い、水辺の事故減少に向けたライフセービング活動を行っている。現在は、単身でライフセービング活動本場のオーストラリアに渡り1年間武者修行を行った後、トップライフセーバーとして日の丸を背負い海外選手と戦う一方で、一般企業に就職し会社員として働きながら、二足の草鞋を履いたトップアスリートとして活動している。 

インタビュー後記 

今回は、コーチャビリティの観点から池端選手にインタビューさせていただきました。

その中で最も印象に残ったのが、コーチャビリティを構成する要素の1つである「フィードバック探索行動(※1)」の多さ。 
教えてくれる人がいない状況下であっても、フィードバックを得られる環境を自ら作ってきた池端選手。それが池端選手の活躍に繋がったと実感しました。 

「フィードバック受容性(※2)」については、フィードバックを全て受け入れるのではなく、内容を腹落ち出来るまで質問をして取捨選択をしていくというお話がありました。 
その一方で、必ずしも自身の考え方にそぐわなくても、フィードバックの半分は受け取ってみて1回は試してみるという柔軟なやり方をされてもいました。
編集の都合上省略しましたが、競技未経験のお父さんからのフィードバックを受け入れることもあるそうです。 

ひとつの気づきだけでも結果が大きく変わることが多いビジネスの世界。 
それに対して、池端選手は色々なフィードバックの積み重ねでようやく結果の差が実感できると仰っています。改めて、アスリートの世界の厳しさに気づかされました。
私達もせめて年に1つ位は気付きを元に成長していきたいものです。 

(※1)自ら他の人のフィードバックを求める意欲や行動のこと 
(※2)フィードバックを受け取る意欲や行動のこと 

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