コーチャブルとは、コーチャビリティ（「個人の成長とパフォーマンス向上を促進するために、建設的なフィードバックを求め、受け入れ、実行する意欲と能力」）がある状態のことを指します。
本稿では、従業員がコーチャブルであることと組織の「配置」の関係について、コーチャブルであることの方が配置に及ぼす影響と、配置の方がコーチャブルさに及ぼす影響の両方について紹介します。
※本稿における「配置」とは、採用や代謝は含まず、社内で完結する従業員の役割（持ち場）への割り当てまたは割り当てた状態の事を指します。配置の中でも、組織図上の縦方向の配置転換のことを「昇格昇進・降格降職」、横方向の配置転換のことを「異動」としています。また、配置転換のうち、勤務地の変更を伴うものを「転勤」としています。
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コーチャブルであることが配置に及ぼす影響
まずは従業員がコーチャブルであることの方が組織の配置に対して及ぼす影響について紹介します。
コーチャブルであることが昇格昇進・降格降職に及ぼす影響
コーチャブルであると昇進可能性が高まることが示唆されています。
昇進可能性とは、上司から見た時の対象の従業員が組織内で昇進を達成するか、あるいはすべきかどうかについての印象を指します。
昇進可否には、対象の従業員本人の昇進意欲と、昇進後の役割を担える能力とが関係します。
昇進意欲については、対象の従業員から求められるフィードバックによって、上司がより判断しやすくなる面があります。例えば、コーチャブルな従業員はよりフィードバックを求める行動を行うものですが、求めるフィードバックの基準が本人の現在の役職より上の基準になっている場合等は、上司は本人の昇進意欲を判断しやすいでしょう。
また、能力については、上の職位で成功するための知識・スキル・能力の開発がしやすいと上司が判断しやすくなる面があります。例えば、コーチャブルな従業員は現在の職位においてもフィードバックを求め、受け入れ、実際に行動に移すことで、知識・スキル・能力の向上と業務の成果を挙げているため（だから周囲からコーチャブルだと見なされている）、上位の職位でも同じように成果を挙げれるようになると上司に判断されやすいと言えます。
コーチャブルであることが異動・転勤に及ぼす影響
コーチャブルであること自体が直接的に異動・転勤に影響を及ぼすとは考えられていません。
ただし、コーチャブルであることは素直さや謙虚さとも近しいものがありますので、組織がそうした人を比較的異動・転勤に応じて貰いやすい従業員だと考えることはあるかもしれません。
それでも最近は職種や勤務地を限定した働き方も少しずつ増加していることもあり、総合職だからといって企業側が自由に異動・転勤させるケースも以前より減ってきているようですし、今後もその傾向が強まっていくでしょう。
配置がコーチャブルさに及ぼす影響
以降は組織の配置の方が従業員のコーチャブルさに及ぼす影響について紹介します。
ここではコーチャブルさを構成する要素の中でも特に、フィードバック探索行動と言われる自らフィードバックを求める行動について紹介します。
結論としては、昇格昇進・異動・転勤・組織変更等の様々な配置転換が従業員のコーチャブルさを高めうるだろうと私は考えています。
フィードバック探索行動は、フィードバックによって得られる情報の価値とそれを得るためのコストの比較によって決定されるという理論があります。また、自身にとって不明なことが多い状況においては、得られる情報の価値は高く評価されやすいという研究もあります。
昇格昇進・異動・転勤・組織変更等、新たな環境に置かれたり、または組織自体が変化して新たな適応が求められる場面においては、従業員には不明なことが多いため、「わかってない奴だと思われないかな」といった精神的コスト（＝不安）を乗り越えて積極的に情報を得ようとすると考えられます。
例えば、昇格昇進の場合はこれまでのプレーヤーとは全く異なるマネージャーとしての役割に適応しなければならなかったり、異動の場合は経験のしたことのない業務を行う事であったり、転勤の場合はこれまでと異なる風土・文化への適応を求められたり、組織変更の場合は新しい行動規範に基づいた行動に変えなければならないでしょう。要は「心機一転、初心に返って邁進するしかない」というマインドになりやすいシチュエーションなのだと思います。
まとめ
- コーチャブルとは、コーチャビリティ（「個人の成長とパフォーマンス向上を促進するために、建設的なフィードバックを求め、受け入れ、実行する意欲と能力」）がある状態のことを指す。
- コーチャブルであると昇進可能性が高まる。
- 昇格昇進・異動・転勤・組織変更等の新たな環境への適用が求められるシチュエーションにおいて、従業員のコーチャビリティは高まると言えそう。
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参考文献
Weiss, J. A. and Merrigan, M. （2021）”Employee Coachability: New Insights to Increase Employee Adaptability, Performance, and Promotability in Organizations” International Journal of Evidence Based Coaching and Mentoring, 2021, Vol.19(1), pp121-136.
