記事

フィードバックとは?定義・重要性・ 方法の解説


効果的な人材開発の手段の一つとしても、ここ数年で日本の職場において一気に市民権を得た感のある言葉「フィードバック」について、その意味・重要性・効果的な実践方法をわかりやすくご紹介します。

【関連記事】フィードバックを受け取る意欲や能力(=コ―チャビリティ)については、こちらの記事をご確認ください。

フォスターリンク株式会社

本サイトはフォスターリンク株式会社(https://www.fosterlink.co.jp/)が運営しています。
フォスターリンク株式会社は、組織・人材マネジメントコンサルティング、クラウド型システム「HR-Platform」、各種サーベイ、給与計算代行など、企業の組織・人事に関わる様々な課題へのソリューションを提供しています。

フォスターリンク株式会社をフォローする

フィードバックとは何か?

職場におけるフィードバックとは、「相手の成長を願って、観察した相手の行動や成果に対して、自分の意見を伝えるコミュニケーションのこと」だとフォスターリンクでは考えています。

その内容がポジティブかネガティブか、種類が感謝・評価・指導のいずれなのか、方法がコーチング的かティーチング的か、伝達手段が口頭か文書か等に関わらず、上記の定義に当てはまるものは全てフィードバックと言ってしまってよいでしょう。

定義についてもう少しだけ詳しく確認してみましょう。

定義①:フィードバックは相手の成長を願って行うもの

まず最初に、そして最も重要であるのが、フィードバックは相手の成長を願って行うものだということです。

仮に同じことを指摘したとしても、それが相手の成長を願ってのことなのか単に誹謗中傷をしたいだけなのかで、不思議と相手への伝わり方や相手の受け止め方に差が出てしまうものです。
職場におけるフィードバックは、必ずしも感謝やポジティブなものだけではなく、一種の「痛み」を伴うものも少なくありません。
必要以上にその痛みを大きくすることのないよう、相手の成長を願ったうえで敬意を持った形のフィードバックを心掛けるようにしましょう。

定義②:フィードバックは観察した行動や成果に対して行うもの

次に、フィードバックは観察した行動や成果に対して行うものです。

行動や成果といった形で具体的に表出していない事柄(例えば多分に憶測を含むこと)を対象に指摘をしようとすることはフィードバックとは言いません。
また、基本的には自分で観察していない伝聞に基づく指摘もフィードバックとは言い難いです。あなたが余程の達人でもない限り避けた方がよいでしょう。

この辺りの事については、後述する「フィードバックの進め方」の項もあわせてご参照頂くとよいと思います。

定義③:フィードバックはコミュニケーション

最後に、フィードバックはコミュニケーションであるということです。

相手がそもそもフィードバック自体を拒否しているのではない限り、フィードバックは相手に伝わらなければいけません。
自分が「言ったかどうか」ではなく、そのフィードバックを相手が受け入れるかどうかは別として、相手にフィードバックしたことが「伝わったかどうか」を意識するようにしましょう。

参考:語源

フィードバックという言葉は、もともとシステム工学で「フィードバック制御」という用語として使われていました。フィードバック制御とは、ある出力を入力する側へと伝え、2つの値を比較して値が一致するように修正動作をするシステムを指します。

例えば、家庭用のエアコンで説明すると、エアコンの温度を設定する機能がフィードバック制御の一例です。部屋の温度を22度に設定した時、エアコンは「フィードバック」として部屋の現在温度の情報を使います。そしてそのフィードバックに基づいてエアコンの動作を調整し、目的の状態(設定温度)を維持します。

このように、フィードバックとは、目的の状態を維持するために現在の状態を継続的に監視し、必要に応じて調整を行う仕組みという意味合いが、対人関係にも用いられるようになった言葉です。

フィードバックの分類

フィードバックには様々な分類があります。
ここではそのうちのいくつかを紹介します。
いずれの分類においても、その中のどれかが優れていてどれかが劣っているというものではなく、臨機応変にバランス良く使いこなせるようになるのが重要だと言えます。

分類①:ポジティブかネガティブか

ポジティブフィードバックとは、望ましい、または期待を満たすパフォーマンスに対して、良いところを指摘することを指します。

一方でネガティブフィードバック(ギャップフィードバックとも言う。)とは、望ましくない、または期待を下回るパフォーマンスに対して悪いところを指摘することを指します。

分類②:感謝か、評価か、指導か

「ハーバード あなたを成長させるフィードバックの授業」という本によると、フィードバックには感謝・評価・指導の3種類があるとされています。

感謝には「ありがとう」という直接的な感謝だけでなく、「ちゃんとあなたのことを見ていますよ」というような承認も含まれます。
評価は、査定・ランクづけ・点数づけの一種で、評価者から見た被評価者の現状を教えてくれるものです。
指導は、相手の学習・成長・変化を助けることを目的に行われるものです。指導のフィードバックには、直接的間接的を問わずに評価のフィードバックも付随することも多いです。

相手が求めているのと異なるタイプのフィードバックをしてしまうと行き違いから互いの信頼関係を損ねてしまうこともあるため、フィードバックを行う際は事前にお互いにフィードバックの目的を一致させたり、意図を伝えておくことが望ましいです。この際に、フィードバックをする側だけでなく、フィードバックを求める側・される側の意欲や態度も同様に重要であることは言うまでもありません(コーチャビリティについては、こちらの記事を参照ください。)。

分類③:コーチング的か、ティーチング的か

相手に気付きを与える方法として、コーチング的なものなのかティーチング的なのかといった分類も可能です。

コーチング的なフィードバックでは、質問の投げかけや対話を通じて、相手の気付きを引き出します。
ティーチング的なフィードバックでは、より直接的に相手に気付きを提供します。

分類④:フォーマルか、カジュアルか

フォーマルなフィードバックには、例えば人事考課のフィードバック等、会社の人事制度と紐づいたものが挙げられます。

カジュアルなフィードバックは、通常業務の中で顧客へのプレゼンの内容についての意見などを貰うこと等が挙げられます。

なぜフィードバックが重要なのか?

フィードバックが重要なのは、それが人と企業の成長につながるためです。

人材開発の観点から見ると、フィードバックは受け手が業務を通じて成長するためのサイクルを回していく要素の一つと言えます。

人が業務を通じて成長し、次なる業務に活かすために必要なサイクルとして、「経験学習」という概念があります。これは、アメリカの教育学者であるデービッド・コルブ氏が提唱した概念です。
コルブ氏は、「具体的経験」「内省的反省」「概念化・抽象化」「能動的実験」の4つのステップからなるサイクルを繰り返し、経験学習が行われると提唱しています

このうち「内省的反省」が、具体的に経験したことを内省し、分析するステップにあたります。
そしてここで重要なのが『他者からのフィードバック』です。
本人による主観的な見方だけでなく他者の客観的な視点も活用するのです。
本人だけでは気付かないことや振り返りたくないようなことについてもフィードバックを受けることで受け手に「内省的反省」を促し、成長させていくための役割を担っています。

こうして人が成長することで、企業もまた成長していきます。

フィードバックの進め方

ここでは、フィードバックの具体的な進め方について解説していきます。
フィードバックの進め方としては、以下の3ステップが必要です。

STEP1. 事前情報の収集
STEP2. フィードバック
STEP3. フォローアップ

STEP1. 事前情報の収集

フィードバックをする際に最も重要なことは、フィードバックから始めず、事前準備を行うことです。
先述した通り、フィードバックの効果は、部下のコミットメントと成長満足感を高めることにあります。
そのためには、部下にとって自分の行動のどういった点が問題なのか、改善すべきなのかを具体的に指摘する必要があります。
事前準備や情報収集がなされていない状態であると、具体的な指摘ができず、フィードバックの効果を発揮できないことにつながります。

この事前情報を収集する際に参考になるのが「SBI」フィードバックモデルに基づいた収集方法です。
SBIとは、Situation、Behavior、Impactの頭文字をとったもので、それぞれ収集したい情報としては以下のようにまとめられます。

・Situation:どのような状況、どんな状況の時に
・Behavior:どんな振る舞いや行動が
・Impact:周囲やその業務に対してどんな影響をもたらしたのか、何がいけなかったのか

また、このSBIフィードバックモデルに基づいた情報収集を行う際には、主観ではなく客観的な数字も交えて収集し、具体的に指摘を行うことも重要です。

STEP2. フィードバック

事前情報の収集が完了したら、いよいよフィードバックを本格的に始めていきます。
ここでは、まず、部下に安心感を与えられるよう、過剰な緊張状態をほぐすことを意識していきましょう。初めからフィードバックを行うのではなく、雑談や最近の共通の話題などについてから話すことが効果的です。

過剰な緊張状態をほぐし、安心感を感じてもらえたところで、本題のフィードバックへと進みます。
ここで意識しておきたいのは、先に述べたビジネスにおけるフィードバックの2つの意味です。
あくまでも部下のパフォーマンス立て直しのための①情報通知、②支援という点を忘れず、事実を通知し、一緒に対策を考えていくという姿勢を崩さず行うようにしましょう。

また、どんなフィードバックであっても、相手にとっては一定の痛みを伴います。
そのため、先に情報通知を行うのではなく、共に改善していこうという意思をストレートに相手に伝えたほうが、前向きにフィードバックを受け止める気持ちが醸成されやすいでしょう。

▶フィードバックを受け入れる力(コ―チャビリティ)を養うには?
 こちらの記事をご確認ください。

STEP3. フォローアップ

フィードバックが完了したら、部下の内省を促し、これからの新しい行動計画や目標を作り出すためのフォローアップを行っていきます。

フィードバックの重要性のところでも述べた通り、フィードバックは内省的反省を促すことによって学習を深めていくサイクルの1つです。
そのため、効果を最大限に活かすには、内省が不可欠となります。

内省を促すために有効な手段は、部下自身に過去の自分と現在の状況などを言葉にさせることです。
この場面では、フィードバックのように上司が言葉を伝えるのではなく、問いかけを行うことで部下自身に自分の言葉で語らせます。

特に以下のポイントを意識して問いかけを行うようにしましょう。

・What?(何が起こったのか)
・So what?(それはなぜなのか)
・Now what?(これからどうするのか)

こうした問いかけを行うことで、表層的な問題だけでなく深層部分でどのような課題や問題を抱えていたのかについても、部下自身が気づくきっかけを与えることにつながるでしょう。

効果的にフィードバックを行うためのポイント

フィードバックの進め方について前の項で説明しましたが、更にそのフィードバックを効果的に行うポイントとしては次の2点が挙げられます。

1on1ミーティングを取り入れる

先に説明した「SBI」フィードバックモデルに基づいた情報収集を行うには、日頃から部下とコミュニケーションを取り、状況を把握しておく必要があります。
そこで有効なのが1on1と言われる一対一のミーティングです。

また、コーチングの大手企業コーチ・エイが発表したデータによると、直属の上司からフィードバックを受ける頻度が高いほど、自分の目標と組織の目標とのつながりを理解している部下が多いということも示されています。

引用:COACH A Co.「目標達成に向けた上司からのフィードバックの頻度」に関するアンケート調査

具体的には週に1回以上のフィードバックで約77%の部下が肯定的な返答をしていることから、これまでのように年に1~2回の面談ではなく、その頻度を上げていくことが重要であることがわかります。

情報収集と共に、部下とのコミュニケーション頻度を上げるためにも、1on1ミーティングは有益であると言えるでしょう。

上司もフィードバックを受ける経験を積む

フィードバックする力を高めていくためには、自分自身がフィードバックを受けたり、自分のフィードバックを客観的に観察する機会を作ることが重要です。

そのためには、例えば周囲の上司や部下に対して模擬フィードバックを行ったり、アシミレーションを行う機会を設ける、360度フィードバックを取り入れることが有効な手段となります。

アシミレーションとは、元々外資系企業で行われているフィードバック手法の一つです。
具体的にはチームのリーダーとメンバー間の相互理解を深め、関係構築を促進する仕組みを指し、チームに新しいマネージャーが着任した時などによく用いられます。
上司抜きで上司について語り合う場を設け、その議論の内容を匿名で上司にフィードバックするのが、アシミレーションの一般的なやり方です。

また、360度フィードバックとは、自己啓発を促す人材開発ツールです。
360度フィードバックを行うことで、上司からだけではなく、同僚や部下といった複数の立場や視点からのフィードバックを受けることができ、自分自身では気づかなかった「己」を知る手がかりを得ることができます。

フィードバックを行う際の注意点

ここまで、効果的なフィードバックの仕方やポイントについてみてきましたが、最後に、フィードバックを行う際に陥りやすい点や始める前に意識しておきたい注意点について解説します。

経験軸とヒト軸の2つを意識する

これは、人材を育成する際の重要な指標ですが、フィードバックを通じた人材育成を行う際にも重要なのが「経験軸」と「ヒト軸」の2つです。

「経験軸」とは、リアルな現場での業務経験を最も重視する考え方です。
これに基づいて、研修などのプログラムではなく、実際の業務を見た時に、部下に対して適切な経験をさせているかをチェックしていきます。
経験学習理論で言うと、現在の能力でできてしまう業務ではなく、少し背伸びをした時にできる業務をさせることが重要です。
そもそもその業務自体が部下にとって最適な業務となっていない場合、いくらそれに対してフィードバックを行ったとしても相手には響かない結果となってしまうことが考えられます。

もう一つの「ヒト軸」とは、職場における様々な人からの関わりを重視する考え方です。
職場において人とのコミュニケーション量が多かったり、質が良ければ良いほど、人は成長するチャンスが増えていきます。
人材開発研究の第一人者である中原氏によれば、職場で人が育つには他者からの「業務支援」「内省支援」「精神支援」の3つが必要であると言われています。

一方的に上司からフィードバックを受けるだけでなく、同僚や先輩などからバランスよくフィードバックを受けられる環境となっているかどうかのチェックが必要です。

組織が負担する3つのコストを理解する

学術研究によると、フィードバックを行うためには組織が受け入れなければならないコストがあります。
それは、「Effort cost(努力コスト)」「Face cost(対面コスト)」「Inference cost(推論コスト)」の3つです。
(引用:THE IMPACT OF CULTURE ON FEEDBACK-SEEKING BEHAVIOR: AN INTEGRATED MODELAND PROPOSITIONS/MARY F. SULLY DE LUQUE,STEVEN M. SOMMER)

これは、他者にとって耳の痛いことでも指摘ができる人材を組織の中に確保したり育てていくということのコスト、対面でフィードバックを行うための時間や労働力を確保するためのコスト、そして得られたフィードバックに対して解釈し、実行するための時間的・精神的余裕を与えるコストという意味です。

こうしたコストを負担するのは個人ではなく、組織であるという意識を持つことが、フィードバックを行う際に注意すべきことの一つとなります。

まとめ

  • ビジネスにおけるフィードバックとは、パフォーマンスの立て直しのための情報を通知し、支援を行うこと
  • フィードバックは内省的反省を促し、経験学習のサイクルを回す
  • 高頻度のフィードバックは信頼性、信頼を高め、受け手のコミットメントや成長満足感を高める
  • フィードバックには、事前の情報収集、フィードバック、フォローアップの3段階が重要

フォスターリンク株式会社では、フィードバックを効果的に行うための企業向けの人材開発支援プログラムを提供しています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

参考文献

COACH A Co., Ltd.(2023)「目標達成に向けた上司からのフィードバックの頻度」に関するアンケート調査」
MARY F. SULLY DE LUQUE,STEVEN M. SOMMER “THE IMPACT OF CULTURE ON FEEDBACK-SEEKING BEHAVIOR: AN INTEGRATED MODELAND PROPOSITIONS”
Stone, D. and Heen, S. (2014) Thanks for the Feedback: The Science and Art of Receiving Feedback Well. Viking. (花塚恵訳『ハーバードあなたを成長させるフィードバックの授業』東洋経済新報社, 2016).
中原淳(2017)『フィードバック入門』PHP出版.
中原淳(2023)『人材開発・組織開発コンサルティング』ダイヤモンド社.
三村真宗(2023)『みんなのフィードバック大全』光文社.