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大人の非認知能力の伸ばし方 | GRIT指標によるアプローチについて解説

文部科学省も提言するほど幼児期や学生時代の成長に重視されている非認知能力。
現代のビジネスにおいても、この非認知能力の重要性が注目されています。

一見、幼児期ではないと伸ばせないと思われがちなこの能力ですが、大人になってからも十分に伸ばせる能力であるという点も、注目すべきです。以下では、ビジネスにおける非認知能力の重要性と、大人になってからの成長可能性について考察します。

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非認知能力とは

「非認知能力」にはさまざまな定義があり、学問的に統一された見解はありません。

例えば、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のジェームズ・ヘックマン氏は、意欲やコミュニケーション力といった数値では測れない能力を「非認知能力」と定義しています。
また、一般財団法人日本生涯学習総合研究所(以下、日本生涯学習総合研究所と記載)は、非認知能力を「物事に対する考え方、取り組む姿勢、行動など、日常生活・社会活動において重要な影響を及ぼす能力」と説明しています。

非認知能力と認知能力との違い

引用:「非認知能力」の概念に関する考察 一般財団法人 日本生涯学習総合研究所

日本生涯学習総合研究所によると、認知能力とは基礎学力や専門性・専門知識、基礎的な知識・技能を指します。

一方で、非認知能力とはこれまで測定されておらず認知されていなかった新しい能力とされています。

非認知能力の具体的なスキル

日本生涯学習総合研究所によると、非認知能力は以下の16個に分類されます。

こちらの図からもわかる通り、学生時代だけでなくビジネスの場においても重要となるスキルが多いと言えます。

非認知能力がなぜ大人にとっても重要なのか

ビジネスの現場では、技術的なスキルや知識以上に、日々の業務や人間関係を円滑に行うための柔軟な対応力が求められます。
特に次のような場面では、非認知能力が大きな差を生むことがあります。

非認知能力とリーダーシップ

リーダーシップを発揮するには、感情的知性(EQ)が重要です。感情的知性(EQ)とは、自分自身や他者の感情を理解し、適切に管理する能力です。
この感情的知性はリーダーが効果的にチームを導き、信頼関係を築き、ストレスの多い状況でも冷静に対処するために重要な要素と言われています。

この感情的知性と非認知能力は密接に関連しており、影響を及ぼし合う関係です。
例えば、感情のコントロール力は、ストレスの多い状況でも落ち着いて行動できる非認知能力の一部です。

このように、非認知能力の高さはリーダーシップの発揮にも関わる要素と言えます。

リーダーシップを養う方法とは?
こちらの記事もご確認ください。

モチベーションの維持と長期的な成功

非認知能力の一つである自己管理能力は、モチベーションの維持に重要です。

自己管理能力の高い人は、誘惑や短期的な報酬に惑わされず、長期的な目標に向かって集中し続けることができます。この能力により、途中でモチベーションが下がりそうな場面でも、自分を奮い立たせることができ、結果的に長期的な成功を達成しやすくなります。

時代の変化に即した対応力

VUCA(※)と呼ばれる現代においては、問題解決力や実行力を発揮し、急速に変化する社会情勢に対応していくことが求められます。
企業としても市場で生き残るためには、こうした能力を持った人材の育成や確保が求められています。

※ 「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を組み合わせた略語で、社会やビジネスの環境が目まぐるしく変化し、先行きが不透明で将来の予測が困難な状況を意味する言葉

非認知能力を大人が伸ばすには?

アメリカの心理学者アンジェラ・L・ダックワース氏は、成功者に共通するGRIT(やり抜く力)の指標を通じて、非認知能力は、大人になっても身に付けることができると述べています。

GRIT(やり抜く力)の4要素とは

アンジェラ・L・ダックワース氏が提唱したGRIT(やり抜く力)とは、困難な状況や長期的な目標に対する「情熱」と「粘り強さ」に焦点を当てたものです。

その中でも、成功者に共通する要素には以下の4つがあると述べています。
また、この要素は年月と共に順に強くなっていくと説明しています。

1、興味
2、練習
3、目的
4、希望

この4つの要素は、育成や経験によって強化することができるとされています。
以下にGRITを高める具体的な方法を説明していきます。

フィードバックを受け入れる姿勢を養う

フィードバックを受け入れる姿勢や対人スキルは、GRITの両要素(情熱と粘り強さ)に大きく影響します。

GRITが高い人は、フィードバックを前向きに受け入れ、それを改善の機会と捉えます。これは非認知能力の一つである問題解決力やコミュニケーション力の向上に繋がります。
フィードバックを効果的に活用することで、自分の行動を見直し、粘り強さを維持しながら目標に向かうことができます。

フィードバックを受け入れる力を養う「コ―チャビリティ研修」とは?
こちらをご確認ください

長期的な目標を設定する

粘り強さを発揮していくためには、非認知能力の一つである自己管理能力が欠かせません。
そしてこの粘り強さを強化するには、長期的なビジョンを明確に持ち、それに向かって日々の行動を一貫して進めることが重要です。

日々の行動を積み重ねることで自信をつけ、最終的な大きな目標に向かって努力を続ける習慣を作っていきましょう。

興味が持てる分野を追求する

GRITを高めるためには、自分が本当に興味や情熱を持てる分野を見つけ、その分野に集中して取り組むことが大切です。

興味があると、途中で挫折しそうになっても、目標に向かって努力を続ける主体性や探求心が湧いてきます。
ビジネスにおいても、自分のキャリアを自ら選択していくキャリア自律という考え方が注目されています。長期的な目標に向かって一貫した関心を持ち続けるためには、その分野に興味関心を持ち、自身で選択していくということが重要となります。

キャリア充実感を向上させるキャリア自律とは?
こちらの記事をご確認ください

まとめ

客観的な数値として測定が困難であるものの、ビジネスにおいても重要な非認知能力。
子供時代だけでなく、大人になってからもトレーニングによって向上させることができることがわかりました。

他者からのフィードバックを通じて自己認識を深め、目標達成に向けた自己制御力を鍛えることが、持続的な成功のカギとなります。

参考文献

Angela Duckworth(2016)Grit: The Power of Passion and Perseverance
一般財団法人 日本生涯学習総合研究所(2018「非認知能力」の概念に関する考察