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リーダーシップパイプラインとは?効果的な開発方法や課題への対処法


多くの組織が直面する課題の一つが、将来のリーダーを継続的かつ効果的に育成することです。
リーダーシップパイプラインは、この課題を解決するための重要な手段となります。

本記事では、リーダーシップパイプラインの概念を探求し、効果的なリーダーシップ開発のための実践的なアプローチと戦略を解説します。リーダーシップ開発の手法について学び、理解を深めたい企業経営者や人事担当者はぜひご一読ください。

【関連記事】次世代リーダーの育成に関しては、こちらの記事をご確認ください。

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リーダーシップパイプラインとは

リーダーシップパイプラインとは、未来のリーダーを円滑に育て上げるための体系的な取り組みを指します。これは、組織内で連続的にリーダーシップ能力を持つ人材を発掘し、成長させ、適切なポジションに配置するプロセスの構築を意味しています。

このリーダーシップパイプラインを体系立てた代表的な理論に「パイプライン・モデル」があります。これは、アメリカのビジネスコンサルタントRam Charan、James Noel、Stephen Drotterの3氏によって提唱されたリーダーシップ開発のフレームワークです。

リーダーが通るべき6つの転換点

「パイプライン・モデル」によると、リーダーが通るべき転換点には以下の6つが挙げられます。

  1. 一般社員から係長へ ー 自身の管理から他者の管理への移行
  2. 係長から課長へ ー 他者の管理から管理者の管理への移行
  3. 課長から部長へ ー 管理者の管理から部門責任者への移行
  4. 部長から事業部長へ ー 部門責任者から事業責任者への移行
  5. 事業部長から事業統括役員へ ー ビジネスの事業部全体を運営する役割への移行
  6. 事業統括役員から経営責任者へ ー 組織全体を監督する役割への移行

リーダーはこの6つの転換点を通る中で必要となる能力を伸ばしていくというのが、このモデルの考え方です。

必要となる3つの職務要件

上述した6つの転換点において、リーダーは新しい職務要件を習得し、既存のアプローチを見直していく必要があります。その際に必要となる職務要件は以下の3つです。

1、新しいスキル

新しい職務を遂行するために必要な新しい能力を指します。

2、業務時間配分

どの仕事に対してどのくらいの時間をかけるかを決めることを指します。

3、職務意識

その職務の重要性を認識し、真摯に取り組む必要性を見出していることを指します。

例えば、最初の転換点を通る際に学ぶべき職務要件としては、以下のようなものが考えられます。

新しいスキルとしては、他者を含めた仕事の割り振りや、他者の仕事への評価、フィードバックしたりコーチングを行う技術が必要です。
また、自分が仕事をするだけでなく、他者に効率的に仕事をさせる必要が生じます。そのため、実務以外の管理業務に時間を割けるように時間配分も変えていかなければなりません。

更に第一転換点において最も難しいのは、職務意識を変えることです。
他者のために時間を使うことが自分の責務であると考えること。そして、部下の育成が自分に課せられた重要な仕事ととらえる考え方の転換が必要となります。

リーダーシップパイプラインの重要性

継続的に未来のリーダーを育てていくリーダーシップパイプラインは、以下の点から重要とされています。

後継者育成計画の効果を高める

後継者計画(サクセッションプランニング)は、将来の後継者候補を組織的・計画的に選定し、育成、プールしていく仕組みです。

リーダーシップパイプラインが確立すると、組織内で連続的にリーダーの才能を特定し、育成し、活用するプロセスが出来上がります。これにより、組織は常に適切なリーダーを後継者として準備することが可能になります。
これは、将来の後継者候補の予期せぬ空白を防ぎ、後継者育成計画を後押ししていくことにつながります。

リーダー育成の問題点を特定できる

リーダーシップパイプラインは、育成経過での問題点を特定できるという強みがあります。

すなわち、特定の人材を採用できていないというだけでなく、どの職位にどういった要件の人材が育成できていないのかを知る手掛かりとなります。
個人の能力と職位との不適合を見つけた場合は、研修や実務経験によって育成することが可能になります。また、もしその不適合レベルが重大なものであれば、必要に応じて候補者を変えるという選択肢がとりやすくなります。

キャリアの道しるべになる

リーダーシップパイプラインは、各職位や役割に応じたキャリアの進路を明確に示します。

それにより、対象者は、自分が現在位置する場所、次に目指すべきステップ、そしてそれを達成するために必要なスキルや経験を理解できます。この透明性は、個人のキャリアビジョンを立てやすくし、具体的な行動を取りやすくすることにつながると言えます。

リーダーシップパイプラインを構築する方法

実際にリーダーシップパイプラインを構築するにはどうすれば良いでしょうか。ここでは、その具体的なアクションについて解説していきます。

管理職の役割と成果基準を明確にする

管理職の役割を明確にし、各リーダーが自身の職務において何を達成すべきかを明らかにします。そして、各職位ごとの成果基準を設定します。

この場合の成果基準とは、リーダーとしての潜在能力や実際のパフォーマンスを評価、育成するための具体的な指標や基準を指します。これらは、個人がリーダーとしての役割を果たす上で達成すべき目標や成果を明確にし、組織内での成長や発展の道筋を示します。

リーダーシップパイプラインのプロセスでは、これらの成果基準を用いて、個人が次のリーダーシップレベルに移行する準備ができているかを評価します。

具体的には、職務記述書を作成して、各管理職の責任範囲、期待される成果、必要なスキルセットなどを定義する方法が一般的です。

【関連記事】職務記述書(ジョブディスクリプション)については、こちらの記事をご確認ください。

潜在能力の評価基準を設定する

潜在能力とは、個人が現在の職務を超えた将来のリーダーシップ役割で成功するために必要な能力や資質を指します。リーダーシップパイプラインの構築においては、この潜在能力の有無や程度の判断が必要となります。

潜在能力は抽象的なもののため、判別は容易ではありません。
能力の段階ごとに区分した上で基準を設定していくことが有益な手段となるでしょう。

例えば、数年以内に次の職位の仕事ができる段階、そこまで時間を経ずに同じ職位でより大きな仕事ができる段階、現在と同様の業務でより高いパフォーマンスを発揮できる段階などに分類します。

自社のニーズに合わせて調整する

前述した6つの転換点は一般的なステップのため、自社に置き換えて修正する必要が生じます。

自社のニーズや慣習に合わせて職位の名称を修正したり、転換点を増減します。
また、各職位に必要なスキルや業務時間配分、職務意識の違いを明確にすることも重要です。

最終的に構築されたリーダーシップパイプラインを文書化し、組織に伝達します。
また、社員がその基準について学ぶための研修や全体会を開くことによって、よりリーダーシップパイプラインへの理解を深めることにつながります。

リーダーシップ開発の課題と対処法

リーダーシップ開発プログラムは、組織の将来を担うリーダーを育成する上で不可欠ですが、実施過程で以下のような問題点が生じることがあります。ここでは、これらの問題点と対処法を詳しく解説します。

・人選を誤る
・フィードバックを重視しない
・基準が明確化されていない

人選を誤る

適切なリーダーシップポテンシャルを持つ人物ではなく、現在の成果や地位のみに基づいて対象者を選択してしまうことがあります。これにより、組織のリーダーシップパイプラインの弱体化を招く可能性があります。

これを防ぐためには、現在の業績だけでなく、前述した潜在能力の評価や成果基準をもとに判断することが有益です。また、評価には360度評価、アセスメントセンター、面接、ケーススタディなど、複数の方法を組み合わせることも効果的です。

フィードバックを重視しない

リーダーシップ開発の過程でフィードバックが不足していると、参加者は自身の強みや改善点に気づかず、成長の機会を逃すことになります。フィードバックの不在は、学習効果の低下を招き、プログラムの効果を大幅に減少させます。

これに対しては、フィードバックの文化を育んでいくことが不可欠です。
組織全体でフィードバックを価値あるものと捉え、学習の機会として受け入れられるよう仕組み化していくことが重要です。これは、例えば360度フィードバックや理解を深める発信をし、定期的に構造化されたフィードバックを行う機会を提供していくことです。

また、フィードバックを受ける力である、コ―チャビリティを社員に醸成していくことも重要となるでしょう。

【関連記事】フィードバックについては、こちらの記事をご確認ください。
      コ―チャビリティについては、こちらの記事をご確認ください。

基準が明確化されていない

リーダーシップ開発プログラムの目標や成功の基準が明確にされていない場合、参加者や関係者は期待される成果や評価基準を正確に理解できず、プログラムの効果を測定することが困難になります。

対処法としては、プログラムが開始されるまでに具体的かつ測定可能な目標を設定することです。また、明文化された基準をすべての関係者や社員へ共有することも重要です。

プログラム開始後も、基準が形骸化しないよう、その効果を定期的に評価していきます。
そして、必要に応じて目標や基準を調整し、プログラムの内容を改善していくようにしましょう。

まとめ

  • リーダーシップパイプラインとは、未来のリーダーを円滑に育て上げるための体系的な取り組み。
  • パイプライン・モデルでは、リーダーが通るべき6つの転換点ごとに「新しいスキル」「業務時間配分」「職務意識」の3つの要件を見直す。
  • リーダーシップパイプラインを構築するには、以下の3つが必要。
    1、管理職の役割と成果基準の明確化
    2、潜在能力の評価基準の設定
    3、自社のニーズに合わせた調整

フォスターリンク株式会社では、貴社のニーズに沿った組織開発や人材開発の設計とサポートも行っています。リーダーシップパイプラインの構築についてご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

参考文献

Ram Charan、James Noel、Stephen Drotter「リーダーを育てる会社つぶす会社」栄治出版株式会社
Matthew J. Paese,Audrey B. Smith,William C. Byham(2017)「次世代リーダーシップ開発」ProFuture株式会社
 Russ S. Moxley, Ellen Van Velsor, Cynthia D. McCauley (2011)「The Center for Creative Leadership:CCL」