記事

サーバント、変革型、オーセンティックリーダーシップとは?定義と変遷の解説

リーダーシップを重要視する歴史は長く、その定義も様々です。
ただ、1980年頃を境に、リーダーシップに求められる機能やスタイルは大きく変化してきています。

この記事では、近年注目を集めている3つのリーダーシップタイプについて詳しく解説します。
また、リーダーシップタイプの変遷から見える、リーダーシップの捉え方の変化や定義についても解説していきます。

【関連記事】リーダーシップを養う方法や高め方については、こちらの記事をご確認ください。

フォスターリンク株式会社

本サイトはフォスターリンク株式会社(https://www.fosterlink.co.jp/)が運営しています。
フォスターリンク株式会社は、組織・人材マネジメントコンサルティング、クラウド型システム「HR-Platform」、各種サーベイ、給与計算代行など、企業の組織・人事に関わる様々な課題へのソリューションを提供しています。

フォスターリンク株式会社をフォローする

注目されている3つのリーダーシップタイプ

前述したように、近年リーダーシップのタイプも変遷をとげています。
ここからは、その中でも特に注目を集めている3つのタイプについて詳しく解説します。

1、サーバントリーダーシップ

サーバントリーダーシップとは、リーダーが主にフォロワーのニーズを優先し、彼らの成功と幸福をサポートすることに焦点を当てるリーダーシップのスタイルです。

このアプローチは、ロバート・K・グリーンリーフ(Robert K. Greenleaf)によって1970年代に提唱されました。そして、グリーンリーフが立ち上げたセンターの所長であったラリー・C・スピアーズ(Larry C.Spears)によって、以下のサーバントリーダーシップの10の属性が挙げられました。

1. 傾聴(Listening)
大事な人たちの望むことを意図的に聞き出すことに強く関わる。同時に自分の内なる声にも耳を傾け、自分の存在意義をその両面から考えることができる。

2.共感(Empathy)
傾聴するためには、相手の立場に立って、何をしてほしかかが共感的にわからなくてはならない。他の人々の気持ちを理解し、共感することができる。


3.癒し(Healing)
集団や組織を大変革し統合させる大きな力になるのは、人を癒すことを学習することだ。欠けているもの、傷ついているところを見つけ、全体性(Wholeness)を探し求める。

4.気づき(Self-Awareness)
一般的に意識を高めることが大事だが、とくに自分への気づき(self-awareness)がサーバント・リーダーを強化する。自分と自部門を知ること。このことは、倫理観や価値観とも関わる。


5.説得(Persuasion)
職位に付随する権限に依拠することなく、また、服従を強要することなく、他の人々を説得できる。

6.概念化(Conceptualization)
大きな夢を見る(dream great dream)能力を育てたいと願う。日常の業務上の目標を超えて、自分の志向をストレッチして広げる。制度に対するビジョナリーな概念をもたらす。

7.先⾒力、予⾒力(Foresight)
概念化の力と関わるが、今の状況がもたらす帰結をあらかじめ見ることができなくても、それを見定めようとする。それが見えたときに、はっきりと気づく。過去の教訓、現在の現実、将来のための決定のありそうな帰結を理解できる。


8.執事役(Stewardship)
エンパワーメントの著作で有名なコンサルタントのピーター・ブロック(Peter Block)の著者の書名で知られているが、執事役とは、大切なものを任せても信頼できると思われるような人を指す。より大きな社会のために、制度を、その人になら信託できること。

9.人々の成長にかかわる(Commitment to the growth of people)
人々には、働き手としての目に見える貢献を超えて、その存在そのものに内在的価値があると信じる。自分の制度の中のひとりひとりの、そしてみんなの成長に深くコミットできる。


10.コミュニティづくり(Building community)
人間の歴史のなかで、地域のコミュニティから大規模な制度の活動の母体が移ったのは、最近のことだが、同じ制度のなかで仕事をする(奉仕する)人たちの間に、コミュニティを創り出すことができる。

引用:Larry C.Spears(1998).“Tracing the Growing Impact Of Servant-Leadership.” In Larry C.Spears ed(1998). Insights Of Leadership:Service,Stewardship,Spritt, and Stewardship-Leadership. New-York:Jhon Wiley & Sons.pp.3-6の記述より金井が要約。

「サーバント」とは、人に尽くす(奉仕する)人のことを指します。
この考え方の下では、誰がリーダーであるのかを決めるのはフォロワーとなります。
そして、フォロワーが目的に向かい自発的に活動する際、リーダーの行う支援や奉仕をリーダーシップと捉えています。

つまり、フォロワーの支持を集められるような属性を持ったサーバントになることが、優れたリーダーになる要件だと言えます。

2、変革型リーダーシップ

変革型リーダーシップとは、組織やチームを変革し、持続的な成功を達成するためのリーダーシップスタイルです。

このリーダーシップアプローチは、ジェームズ・マクグレガー・バーンズ(James MacGregor Burns)によって提唱された考え方です。

変革型リーダーシップの特徴は、以下の4つが挙げられます。

1. 魅力あるビジョンを作りだし、それを明確にフォロワーに伝えることができる
2. ビジョンを実現化する戦略を構築し、それが現実に達成できる期待をフォロワーに抱かせることができる
3. フォロワーとの間に人間的ないし感情的な絆を結んで、彼らからより多くの貢献を引き出す
4. フォロワーにとって理想の役割を演じることができる

この考え方は、従来の組織を効率的に管理する人物をリーダーとするという考え方とは一線を画しています。変革型リーダーシップは、予測困難な環境変化を読み解き、状況によっては集団の利益を一時的に損なうこともいとわず、変革に取り組むことを指しています。

すなわち、従来のリーダーシップでは対応できないような変化が生じた時や、従来の組織では周囲の期待に応えられないような状況に見舞われた時に、必要となるリーダーシップということが言えます。

3、オーセンティックリーダーシップ

オーセンティックリーダーシップとは、リーダー自身の信念と価値観に基づいてフォロワーを導くリーダーシップスタイルです。

この概念は、ビル・ジョージ氏による著書『ミッション・リーダーシップ』で広く知られるようになりました。
オーセンティックリーダーシップに求められる特性は、以下の5つです。

1.目的 (自らの目的を理解する)
2.価値観 (倫理観に基づいて行動する)
3.真心 (真心を込めてリードする)
4.人間関係 (継続的な関係を築く)
5.自己規律 (自己を律する)

引用:ビル・ジョージ(2004)『ミッション・リーダーシップ』

これまでのリーダーシップ理論は、特定のリーダーらしい行動やスタイルを追求しているものがほとんどでした。
この点、オーセンティックリーダーシップは、リーダー自身の内面から出発し、個人の価値観、信念、経験に基づいてリーダーシップを実践することを重要視します。

また、フォロワーとの関係において誠実さ、透明性、信頼性を示し、自分の価値観と行動が一致するように努力します。

このアプローチは、組織内でリーダーシップの質を向上させ、フォロワーのモチベーションと満足度を高める助けになるとされています。オーセンティックリーダーシップは、他のリーダーシップスタイルと併用することができ、リーダーシップの進化に寄与するものとされています。

そもそもリーダーシップとは何か

フォスターリンクでは、リーダーシップとは、フォロワーを指導し、影響を与え、組織の共通の目標やビジョンに向かって誘導するプロセスと考えています。

つまり、リーダーシップは組織の目標を達成するためのいわゆる管理行動の一つと捉えています。
また、それは個人の性格や資質のみに依存するものではなく、「仕事」であり、鍛えることも可能であると考えています。

マネジメントとの違い

リーダーシップとマネジメントは混合しやすい言葉です。
両者とも、会社や組織が目指す目標やビジョンを達成することを目標としていることが共通点です。

しかし、その役割や視点、影響要因などは異なっています。

まず、リーダーシップはあくまでもビジョンや方向性を提供し、メンバーへの共感を生み出すことに焦点を当てています。一方で、マネジメントは具体的なタスクやプロセス、リソースの計画や実行に焦点を当てます。

つまり、リーダーシップは組織の進むべき方向を示し、メンバーを導く役割であり、一方、マネジメントは実際の手法やプロセスを考え、組織を効果的に管理していく役割を果たします。

こうしたことから、リーダーシップは中長期的視点が求められるのに対して、マネジメントはタスクなどにも焦点が当てられるため、長期だけでなく短期的視点も求められます。

また、人を動かす行為には大きく2つの方法があります。
1つは強制力を持って人を動かすことです。一方で自発的に人に動いてもらう方法もあります。

前者はハードパワーと呼ばれる、人を強制的に動かす権限を駆使して行う方法です。
これは、マネジメントにおける作用の仕方と言えます。

一方後者はソフトパワーと呼ばれ、人を自発的に動かすやり方です。
こちらは、リーダーシップにおける作用の仕方です。

肩書や権限の有無とリーダーシップは関連せず、そうしたものがなくとも人格や周囲からの人望でリーダーシップを発揮できる人材もいます。例えば、リーダーとしての肩書がなくとも、社員が自発的に行動し、チーム全体が協力的に進むように誘導した場合、それはリーダーシップと言えます。

フォロワーシップとの違い

フォロワーシップとは、組織の成功や成長を促進するために、自発的にリーダーや同僚に協力し、サポートを行うことを指します。

これは、後述するようにリーダーシップの機能への考え方が時代の変遷と共に変わってきたことにより、注目され始めた考え方です。

フォロワーシップの対象には、リーダー自身は含まれないと考えられがちですが、そうではありません。
リーダーも含めて、組織の成功や成長を促進するために行動することを指しています。

良いフォロワーは単に指示通りに従うのだけでなく、自発的にイニシアティブをとり、組織の成果に対して積極的に貢献します。また、リーダーや他のメンバーとのコミュニケーションを重視し、情報を共有し、意見を述べることで組織内の情報伝達を支えます。

すなわち、フォロワーシップはリーダーシップに対する相互作用であり、リーダーとフォロワーの協力と連携によって組織の成功が実現されていくことになります。

リーダーシップの機能の変化

リーダーシップの効果に対する伝統的なアプローチは、ルーティーンな課題を効率的に遂行し、量的な効果を生み出すことに焦点を当ててきました。
具体的には、フォロワーの意欲を維持・向上させ、効率よく組織の目標を達成することが、リーダーシップに期待される機能でした。

しかし、1980年代以降、変革型リーダーシップ理論が登場します。
これにより、リーダーシップによる質的な変化に焦点が移りました。
つまり、単なる効率性だけでなく、リーダーシップが構成員全体の幸福、安全、安心などを保証する機能に関心が高まりました。

また、近年では、リーダーシップの機能の一側面である「人を育てる」という視点が重要視されています。
従来のリーダーシップでは、リーダー主導のもとでフォロワーがリーダーの指示に忠実に従うことが重視されていました。
しかし、近年ではフォロワーを自主的かつ自律的に判断し、行動できるように育てるリーダーシップのアプローチに注目が集まっています。

このアプローチは、フォロワーに対して単なる指示や命令を与えるのではなく、彼らの能力やポテンシャルを引き出し、自己指導能力を高めることを目指します。そうすることにより、組織内でイニシアティブを発揮し、創造性を発揮できるフォロワーを育て、組織の持続的な成功に寄与する可能性があります。

まとめ

  • 近年注目されているリーダーシップタイプは以下の3つ。  
    ・サーバントリーダーシップ
    ・変革型リーダーシップ
    ・オーセンティックリーダーシップ
  • リーダーシップとは、フォロワーを指導し、影響を与え、組織の共通の目標やビジョンに向かって誘導するプロセス。
  • リーダーシップとマネジメントの共通点は、会社や組織が目指す目標を達成することを目的としている点。しかし、役割や視点、影響要因が異なる。
  • フォロワーシップはリーダーシップに対する相互作用。リーダーとフォロワーの協力と連携によって組織の成功を実現する。
  • リーダーシップの機能は、フォロワーの効率的管理から構成員全体の幸福感を保障する機能へ変化している。同時に、フォロワーのポテンシャルを引き出す育成力も重要視されている。

フォスターリンク株式会社では、貴社のニーズに沿った人材開発や研修の設計とサポートも行っています。リーダーシップを高めるための研修や手法などについてご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

参考文献

江波 亮(2008)「リーダーシップ構造論」
中村 久人(2010)『リーダーシップ論の展開とリーダーシップ開発論』
中村 久人(2011)『リーダーシップ発現のプロセスとサーバント・リーダーシップ論の展開』
ビル・ジョージ(2004)「ミッション・リーダーシップ」
Larry C.Spears(1998).“Tracing the Growing Impact Of Servant-Leadership.” In Larry C.Spears ed(1998). Insights Of Leadership:Service,Stewardship,Spritt, and Stewardship-Leadership. New-York:Jhon Wiley & Sons.

芝尾 芳昭, 小野 弘貴, 香川 隆, 高村 智, 清水 雅也(2023)「実践チェンジマネジメント」日本能率協会マネジメントセンター